第九十二夜 サントリー 膳
サントリーのウィスキーに膳というのがある。
というか正確には、あった。
軽く薄い甘さに辛口の舌触り、潔い余韻。
和食にあう”和イスキー”として宣伝されていたのもまだ記憶に新しいが2010年を以って廃止となってしまったらしい。
我が家にはまだ大瓶が一本。ずいぶん昔に友達が飲みにきた時にお土産にくれた。確か鍋だったと思う。
そのまま飲んでも良いし、肉の臭み消しなど料理に使える。
なくなったら是非買い足そうとしていたところだった。
サントリーのここ何年レベルの商品戦略など正直どうでもよい。ハイボールが角だろうが、トリスだろうが知ったことか。毎年山崎と白州の原酒ストックを重ね続けてくれれば、それ以外何も期待しない。ただ、今回の膳は少し寂しかった。
一杯目は山崎を飲んでいたが、おでんのお供二杯目は膳とした。アルコール自体の風味が強いが、その中にさらりと原酒の甘さが香る。なんというか健気な印象。
おでんの熱い汁が身体を降りてゆくのと同時に温かい空気が肩のあたりに広がるのを感じる。おでんにはコップ酒というのは正道かもしれないが、膳なら許されるだろうと思う。
これをくれた友達は遠くに行ってしまった。
残りの少しを料理に使うことはないと思う。