第九十七夜 グレンフィディック12年

ウィスキーと塩味について。

少し前、知る人ぞ知る”池袋の侍”が幾つかのウィスキーが持つ塩飴のような味わいについて教えてくれたことがあった。

確かクライネリッシュだったと思うが、煙たく甘いウィスキーばかり好んでいた私にはとても新鮮に感じられた。

現実的な話、ウィスキーに塩分はないはずだ。
しかし、それでも塩を連想してしまうのは塩の持つ独特の旨みとウィスキーの旨みに共通する部分があり、そこに潮の香りがかぶさってくるからだと思っている。

今日はクライネリッシュではなく、グレンフィディック。甘さの中に微かな塩味。実際に癖のない明るい酒だと思うが、奥の方に少しだけ潮を含んだ空気を感じる。

そんなことを思いつつ運ぶ箸、その先には烏賊の丸干しが在る。肝ごと真烏賊を干したのを、あぶってかじる。

身のストレートな旨みに加え、肝の複雑な風味。
こちらは潮というより海そのもの。ウィスキーの華やかさが気持ちよい。

スコットランドのウィスキーは海との連想で飲むウィスキーが多い気がする。一方、白州や山崎等日本の主要な蒸留所は海ではなく山。不思議だ。